〈(恭一郎)これは
入れかわる直前の 私と娘〉

 

(小梅)おいしい
(恭一郎)だろ?

 

〈これは
入れかわった直後の私と娘〉

 

触らないでよ!

 

(健太)またメールしていいかな?

 

〈私がパパでいた頃 娘が恋を
してるなんて 信じたくなかった〉

 

健太先輩!

 

〈青春 それは 人生の中で
最も輝いている日々〉

 

〈本来ならば青春を謳歌してるはず
の娘のために一刻も早く戻りたい〉

 

早く元に戻ろう

 

〈もう7日以上たったし そろそろ
元に戻れるような気がしていたが〉

 

西野さん どうしたんですか?

 

(和香子)小梅ちゃん 学校は?
試験休みです

 

そう…
(理恵子)どうしたの?

 

奥様 すいません 突然 お邪魔して
(理恵子)あの…

 

主人は 会社に行きましたけど
何か?

 

今日は 奥様にお話がありまして
私に?

 

〈このただならぬ雰囲気
とてつもなく嫌な予感〉

 

私 ピアスを取りに来たんです
ピアス?

 

ああ… 主人が 会社で拾ったとか

 

警備室に届けたと思いますよ

 

《会社で拾ったんだよ》
《西野さんって人の?》

 

《違うよ》
《ウソ!》

 

その件で… わざわざ?

 

他にも…

 

何かしら?

 

(ひそか)お客さま?
うん

 

パパの会社の人で 西野さん

 

あら お世話になっております
いえ

 

(中嶋)リーダー レインボードリームの新しい
販売戦略プランです お願いします

 

頑張ったじゃない
はい これでいければ絶対成功です

 

ただ 問題が一点
問題?

 

予算が15%オーバーです
(内崎)そりゃ無理だわ

 

そこで リーダーの出番なんですよ
来週の御前会議までに

 

根回しの方 よろしくお願いします
予算がなきゃ どんな戦略プランも

 

机上の空論ですからね
お願いします

 

〈「キチョーのウーロン」?
貴重なウーロン? 高級なウーロン茶?〉

 

ミニッツマートでの販路も確保できたし
携帯サイトの方も 打ち合わせに行く

 

携帯サイト? いいね それ
(三船)ティーンは 携帯命ですからね

 

(前田)ミニボトルも いいのができそう
(椎名)新しいデザイン案 超カワイイんです

 

ヤバイ…
ということで 根回しお願いします

 

(中嶋)じゃあ 行ってくる

 

〈でも 会議の前に根回しって
何すればいいんだろ?〉

 

「嫌な予感がするが 心当たりは?」
マジ!?

 

《本気なんです!》

 

〈ママに変なこと言われたら
ヤバイって〉

 

皆さん おそろいだとは
思いませんでした

 

母と妹は 千葉から
歌謡ショーを見に来たんですよ

 

どうぞ お座りになって
今 お茶を

 

いい 私やるから

 

〈俺の知らない所で
西野さんに何があったんだ?〉

 

それで 今日は?

 

(メール受信)

 

すいません

 

〈「不倫」!?〉

 

えッ!?
どうしたの?

 

何でもない

 

「ママと二人きりにさせたら
ヤバイよ 家庭崩壊… かも」

 

(前田)どうでした? 宣伝部
(中嶋)今日中にプラン出せと言ったよ

 

予算の件は
御前会議で決めるんだよね?

 

何のんきなことを 予算を確保して
すべてを検討して これでいけると

 

御前会議で社長にプレゼンして
承認を得るかどうかでしょ?

 

その前に
確実に予算を確保できなければ…

 

高級ウーロン茶!
ゴクゴク 高級な物は おいしいね バカ!

 

だから リーダーが予算取ってくれない
と その先はありませんからね

 

分かった じゃあ 明日でいい?
だから ダメですよ

 

役員達は みんな京都行っちゃうん
ですから 早く説得して 今日中に

 

ハンコもらわらないと
まずは 桜木部長からです

 

申請書?

 

ここからは 気持ちですよ
気持ちで勝つしかないんです

 

これ持って お願いしますよ
行きましょう

 

〈めんどくさいなあ とっとと
ハンコもらって とっとと帰んなきゃ〉

 

あの 私…

 

奥様には
大変申し訳ないと思っています

 

えッ?
あッ 中嶋さんも言ってた

 

「プロジェクトが大変で
家族を犠牲にしてるから」って

 

気にしないでください そんなこと
ところで 西野さん 今日は?

 

はい
≪(ひそか)どうぞ

 

ウチの裏山でとれた
伝説の桃なんですよ

 

伝説の桃…

 

あッ おばあちゃん
思い出したんだよね 桃の伝説

 

そうそう 私が幼い頃 おばあさん
から聞いたお話なんですけどね→

 

おばあさんは そのまたおばあさん
から聞いたらしいんだけど→

 

そのまたおばあさんは
そのまたまたおばあさんから…

 

あッ 分かった
伝説は?

 

あッ

 

昔 昔 その昔
とある桃の木がありましてね

 

その木になった桃を食べて

 

人と人とが 入れかわったという
伝説があるんですよ

 

えッ?

 

〈この桃が原因だったのか〉

 

≪(ひそか)心と体が入れかわる
ロマンチックですね

 

桃を食べて 入れかわれるなんて
おとぎ話みたいね

 

桃太郎みたいなもん?
入れかわれるんですか…

 

そうか…

 

じゃあ ついに…

 

〈元に戻れる〉

 

お願いします!

 

(桜木)このプランが
御前会議で通ったら 考えよう

 

それじゃ遅いんです どんなプランも
高級ウーロン茶になってしまいます

 

ウーロン茶?

 

(植草)しかし 予算と納期は守ると
約束したじゃないか

 

でも 成功させるには まず

 

予算を確保して
すべてを検討して

 

それから… それでいけるってこと
を御前会議で社長にプレゼンして

 

承認されるかどうかに
かかってるんですよね?

 

まッ いいだろう
マジッスか?

 

桜木部長

 

ハンコは押すけど…

 

君の責任だからな
はい

 

中嶋 ハンコ取ったぞー
マジッスか?

 

わりとイージーだったよ
さすがリーダー

 

私 ちょっと抜けるから
はい ちょっと待ったー

 

これ 桜木部長のハンコだけでしょ
次に森山常務のハンコもらわないと

 

承認にならないですよ
森山常務?

 

《(森山)君の発言は 生産性がない
ようだが 何かアイデアはあるのか?》

 

〈メチャメチャ手ごわそう… ああ
早く帰らなきゃいけないのにー〉

 

ごゆっくり どうぞ

 

奥様は 幸せですよね

 

ステキなだんな様に

 

かわいい娘さんに 広~いお家

 

いいなあ
私 奥様と入れかわりたいな

 

えッ…
≪(理恵子)あら 私だって

 

西野さんと入れかわりたいわ
本当ですか?

 

ええ
だって 若くて きれいですもの

 

〈全部食べなきゃ〉

 

なんですか お行儀が悪い
小梅…

 

〈この二人が入れかわったら
ほんとーに大変なことになる〉

 

常務に…
ハンコを押していただけないと

 

ここから先へは進めません

 

ですから お願いします!

 

〈私も だいぶ板についてきた〉

 

納期と予算を守ってもらう
というのが

 

条件だったはずだよ
ですが 先に予算を確保して

 

すべてを検討して
これでいけるって…

 

(秘書)
常務 お車のご用意ができました

 

出る

 

これから京都だ

 

〈手ごわいよ~ でも もしこれが
おこづかいのアップの交渉だったら〉

 

《マ~マ 今月からおこづかい
千円アップしてほしいんだけど》

 

《ダメダメ 2年生のうちは
アップしない約束でしょ?》

 

《学校で売ってるパンも
値上げしたんだよ》

 

《友達も増えたし あのときと
今とじゃ 状況が変わったんだよ》

 

状況が変わったんです ターゲットの
10代には 絶対にカワイイものがウケる

 

新しいプランなら絶対に売れます
そのためには予算が必要なんです

 

君は「絶対」と言うが
そうじゃないかもしれない

 

そうじゃないときのことを
考えるのも 私の仕事だ

 

何にせよ 納期と予算を
川原君の責任で守ること

 

これが条件だったはずだ
ですから それは状況が…

 

状況を変えたのは

 

君だ

 

〈うーッ やっぱ手ごわい〉

 

予算 アップ 予算 アップ

 

おこづかい アップ オーッ!

 

《女子高生にだって
つきあいってもんがあるんだよ》

 

《律子だって おこづかい
アップしてもらったって言ってた》

 

《律ちゃんちの子になりなさい》
《友達とファーストフード行ったり》

 

《映画見たりする時間も大事じゃん
それが将来役に立ったりもするよ》

 

《私の未来への投資をしてよ!》

 

お願い 未来に投資して

 

ください
未来?

 

常務は「ブランド力を高めるために
10代は必要ない」と言いますが

 

10代は 将来 美生化粧品の
お客さんになるんです

 

10代にとって レインボードリームは 美生化
粧品で一番初めに使う商品になる

 

若い頃から使えば 10年20年と美生
化粧品を愛してくれる可能性も

 

あるんです ですから
そのためには おこづかいを…

 

予算をください
お願いします

 

まったく 一人で全部食べちゃう
なんて 何考えてんのやら…

 

ごめん ごめん

 

おばあちゃん そろそろ出かけない
と 歌謡ショー 間に合わないよ

 

もうそんな時間?
急がなくちゃ

 

西野さんも
そろそろ会社に戻った方が…

 

〈お願いだから 早く帰ってくれ〉

 

ううん まだ大丈夫

 

〈「まだ」って…〉

 

それでは 失礼いたします

 

あの 西野さん お話って…

 

実は…
あッ そうだ そうだ

 

さっきパパからメールがあった
書類取りに来てくれたんですよね

 

パパの忘れ物
あーッ そうだったのー?

 

違います!

 

もし… ご主人に大切な人がいたら
どうしますか?

 

えッ?

 

ご家族以外に

 

〈なんてこと聞くんだ?〉

 

中嶋 気持ちで勝ったよ
ハンコ 取ったぞ

 

マジッスか?
マジ

 

悪いけど 今日は直帰ね
どこ行くんスか?

 

まっすぐ帰る お疲れさま

 

それ 「直帰」じゃなくて
「帰宅」でしょ

 

家族以外に 大切な人?

 

それは…

 

困るわね

 

この花
ストロベリーフィールドっていうんです

 

年に一度
主人がプレゼントしてくれるんですよ

 

プロポーズの記念日に

 

いいって そんなこと
西野さんに言わなくても

 

花言葉は… 「永遠の恋」

 

恥ずかしいわね
ほんとだよ

 

(理恵子)でも あの日のこと
忘れないでくれているかぎり

 

何があっても 大丈夫だなって

 

そう思ってるんですよ

 

気をつけて帰ってください
さようなら

 

失礼します

 

ところで 何しに来たんだっけ?

 

さあ…

 

パパ? 今 帰るとこだから
西野さんのこと ほんとにごめん

 

いろいろ話しとけばよかったよ
[TEL]いい それより

 

[TEL]おばあちゃんの家の裏山の桃
桃? 桃がどうしたの?

 

あの桃が 小梅とパパ…

 

小梅ちゃん ちょっといいかな?

 

かけ直す 会社に戻れよ

 

えーッ 今日はもういいよ
「直帰」って はってきたし

 

ダメだ 会議の前だし 戻ってくれ
は~ん どんだけ~?

 

はい プロジェクトルームです

 

西野は お休みをもらってます
はい 失礼します

 

お昼 行ってきます
いってらっしゃい

 

(梶野)中嶋 頼まれてた
携帯サイトの宣伝プラン

 

おお サンキュウ

 

西野さんは?
うん… 休み

 

なーんだ

 

なあ 西野さんって
つきあってる人 いるっぽい?

 

さあ
「さあ」って

 

同じチームで8ヵ月も見てりゃ
分かるだろ

 

《かまわないです!》
《娘がいるんです! お疲れさま》

 

≪(梶野)飯つきあってくんねえか
はッ? べつにいいけど

 

じゃあ 10分後に下
ああ

 

お疲れさん
直帰じゃなかったんですか?

 

復帰

 

不倫? いや そんなわけないか

 

小梅ちゃん 私が何しに来たか
分かってたみたいね

 

いや…
さすが女同士 あなどれないわね

 

〈それは 違うんだが…〉

 

本当のこと 言っちゃおうかな と
思ってたの あなたのママに

 

小梅ちゃんのパパ

 

あの人はね…

 

私のことが好きなの
えッ!?

 

どういう意味ですか?
そのままよ

 

あの人は 私が好き
私も あの人のことが好き

 

〈一体何をしたら こうなるんだ?〉

 

プロジェクトが落ち着いたら 食事に誘お
うかと思ってるんだ 西野さんを

 

お前 もしかして
西野さんと つきあいたいとか?

 

まあ 様子見てからだけどな
なんか余裕の発言だな ムカツクんだよ

 

もしかして お前も狙ってんの?
「狙ってる」?

 

俺は真剣なんだよ

 

あの… 何があったかは
知らないですけど

 

パパ 事故にあってから
ちょっとおかしいんですよね

 

だから 西野さんが思ってるパパは
ほんとのパパじゃないっていうか

 

きっかけは 8ヵ月前だったわ

 

レインボードリームプロジェクトが始まる頃

 

えッ?

 

〈俺が 俺の頃じゃないか〉

 

なぜ パパが西野さんを好きだと?

 

あれは プロジェクトルームへの辞令が
出た日よ

 

《お疲れさん
配線がグチャグチャになっちゃってさ》

 

《えっと…》

 

《西野さんだよね?》
《はい》

 

《秘書室でバリバリやってきた
みたいだから》

 

《突然の人事に
戸惑ってるとは思うんだけど…》

 

《ひとことだけ いいかな?》
《はい》

 

《仕事してるとさ
仕事のために生きてるって》

 

《勘違いしがちっていうか
なんていうか…》

 

《でも 人生のための仕事で》

 

《仕事のための
人生じゃないんだよね》

 

《人生の幸せってさ》

 

《必ずしも自分が思い描いた先に
あるわけじゃないんだよね》

 

《この年になって…》

 

《そう やっと
思えるようになったんだ》

 

《じゃあ 幸せって
どこにあるんでしょうか?》

 

《たぶん》

 

《自分らしく
あり続けようと歩く…》

 

《その先に あるもんだと思うよ》

 

《愛する人と共に》

 

私は すっごく救われた

 

〈当時 読んでた本に載ってた話だ
全員に聞き流されたのに〉

 

〈よりによって西野さんにだけ
響いてたとは…〉

 

べつに人事異動で
泣いてたわけじゃないのよ

 

自分から異動願いも出したし

 

つきあってた人に
ひどい裏切られ方をして

 

自分を見失ってたの

 

そうだったんですか…

 

でも パパは 上司としてというか
先輩として

 

声をかけたんじゃないですかね
ううん

 

奥様より先に 私に出会えてたら
と 思ってるんじゃないかな

 

それは誤解なんじゃないかな
お世話になってる占いの方も

 

そう言ってたの
そうですか…

 

だけど

 

奥様と…

 

あなたがいる

 

だから

 

必死で気持ちに
ブレーキをかけてたんだって

 

分かったの

 

はあ…

 

あの桃…

 

やっぱり食べたかったな

 

なんてね

 

一時期さ レインボードリームプロジェクトが
つらい時期があってさ

 

いや お前は 偉いよ
えッ?

 

だって俺がもし 出世から外れた
プロジェクトにまわされたら 即辞めるよ

 

で?
で 救われたんだよ 彼女に

 

「中嶋さん
仕事は人生のためのものだから」

 

「仕事のための人生じゃないから」

 

「幸せは 自分らしく
あり続けようと歩く その先に」

 

「あるんじゃないですか」って

 

俺さ つらいときに この言葉を
思い出すようにしてんだ

 

そうすると 自分はまだまだ
道の途中なんだって

 

もっと自分らしく…
梶野君がいないッ

 

先行くわ

 

宣伝部の梶野さんだ~

 

やっぱりステキよね~

 

俺はお前と入れかわりたいよ

 

シッポ残しちゃって

 

結局 西野さんどうしたの?

 

[TEL]無事片づいた
今から出社するって

 

[TEL]それより…

 

私は なんて言えばいいの?

 

何も言わなくていい それより

 

おばあちゃんちの
裏山でとれる桃だよ 桃

 

桃?

 

あの桃の伝説が分かったんだよ

 

≪(律子)小梅!

 

りっちゃん

 

(律子)部活行く前に
小梅の家 行こうと思ってたとこ

 

話 あるんだよね
すんごい大事な

 

今 電話中だから
後でいいかな?

 

分かった

 

ごめんごめん で桃の話なんだけど
その桃の伝説っていうのが…

 

すぐ かけ直す

 

桃の伝説?

 

なんで伊豆の旅行行かないの?
約束したじゃん

 

ねえ?
(小関)うん

 

ごめん 健太先輩が
やっぱり やめとこうって

 

なんで?

 

私のこと 大事にしたいからって

 

いまどき なかなかいない青年だよ

 

それって 小関先輩は
私を大事にしてないって意味?

 

いや… え~

 

ハッキリ言ってよ 親友でしょ!?

 

分かった

 

ハッキリ言って 微妙だと思うよ

 

年頃の男の子っていうのは
そういうことで頭がいっぱいで

 

恋と欲望の境界線が
あやふやっていうか…

 

小梅がそんなこと言うなんて
信じらんない!

 

ごめん 正直に言いすぎた

 

最っ低!

 

りっちゃん!
律子!

 

律子 どこ行くんだよ!?
ちょっと待てよ

 

しまった…

 

大失敗だ

 

≪(健太)川原→

 

何してんの?

 

ねえ 試合見に来れる?

 

来週の火曜日なんだけど

 

あッ はい

 

〈て言っとかないと
小梅にしかられるな〉

 

最後の大会だしさ
去年 俺のシュートミスのせいで

 

チームが負けちゃったからさ

 

だから今年は 絶対に俺が決めて

 

ベスト8 行きたいんだよね

 

川原が応援してくれてるから
がんばれそうな気がする

 

がんばれッ

 

ありがとう

 

健太先輩なら
絶対絶対 大丈夫

 

川原…

 

えッ?

 

〈このムード…〉

 

〈まッ… まずい〉

 

ダメです!

 

ごめん…

 

じゃあ俺… 練習行くわ

 

俺がするわけには いかんだろ…

 

でも こうして小梅も

 

大人になっていくのか…

 

複雑だなあ

 

えッ! じゃあ桃を食べたら

 

元に戻れるってこと?

 

[TEL]その可能性が高い

 

すぐ帰るッ

 

中嶋 直帰です

 

えッ?

 

あッ 西野さん

 

遅れてすいません
えっと…

 

もう具合はいいのかな?

 

リーダー すいません実は…

 

明日でいい?
今日は早く帰って桃を…

 

桃!
ごめんねッ

 

西野さん もう大丈夫なの?

 

はい 中嶋さんあの…

 

ちょっといいですか?
うん…

 

〈もしも元に戻ったら〉

 

〈ここに来ることも
もうないんだな…〉

 

今日 予算アップの承認
おりたんですよ~

 

本当ですか!?
リーダーが申請書通してくれて

 

残すは 火曜日の御前会議だけ

 

≪(中嶋)でもさ 最近のリーダーってさ
頼りなさそうに見えて

 

決めるときはガツンと
決めてくれんだよね

 

よくここまで来たもんだわ

 

うん

 

あれ リーダー
どうしちゃったんですか?→

 

また復帰ですか?

 

いや みんなに一言だけ

 

みんなのおかげだよ

 

感謝してます ありがとう

 

どういたしまして

 

〈みんな パパのことよろしくね
さようなら〉

 

健太先輩…

 

私が作ったミサンガ
つけてくれてるんだ…

 

≪(律子)あッ→

 

小梅のパパだ

 

りっちゃん
また家 遊びにおいでよ

 

小梅とは 絶交したんです

 

絶交? なんで?

 

理由は… 言えません

 

〈ちょっとパパ 何やってんの!?〉

 

健太先輩 火曜日
絶対に応援にいくからね

 

…どうも

 

〈健太先輩まで…
態度おかしくない?〉

 

そんなによかったの?
氷山きよし

 

もう最高!
わざわざ来たかいがあったわよね

 

ご飯にしよっか
はーい

 

ただいま あッ おばあちゃん

 

…お義母さん いらっしゃい

 

おみやげの桃は?

 

あの桃はね
食べちゃったわよ→

 

小梅が全部 一人で

 

はッ なんで!?

 

ちょっと…
でもまた裏山に行けば

 

ないわよ
今年の分は 全部とったもの

 

(敏子)一人で全部
食べちゃうなんてねえ→

 

あの木の桃は 10年に一度しか
実らない貴重な桃なのに

 

10年に一度!?

 

も~う 何やってんの!?
信じらんない!

 

ママも西野さんも
お互い入れかわりたいなんて

 

言いながら食べようとしたんだぞ
阻止するしかないじゃないか

 

全部食べることないじゃん
バカじゃないの?

 

バカって…

 

明日 山に行って見つけてくる
地図も描いてもらって

 

もうないって言ってた

 

私 あと10年このままなんて
もう耐えられないよ!

 

あきらめるな

 

何事もあきらめなければ
道は開ける

 

あとはパパに任せろ
任せられるわけないじゃん!

 

そうだ 私も一緒に行こう

 

何言ってんだ
御前会議は火曜なんだぞ

 

元に戻れれば
自分で行けるでしょ

 

健太先輩の大会だって
同じ火曜日なんだから

 

それまでに 絶対に元に戻りたいよ

 

とにかく会社には行ってくれ

 

桃のことはパパのせいなんだから

 

それに 律子のことだって
無神経すぎるよ

 

それは… 悪かった

 

健太先輩の態度だって
おかしかったんですけど?

 

それは
気のせいなんじゃないかな…

 

ふう~ん

 

とにかく私も一緒に行く
早く戻らなきゃ

 

これ以上 パパに
メチャクチャにされたくないよ

 

パパひとりで桃食べたって
意味ないんだからね!

 

分かった…

 

その帽子 おかしいだろう

 

急げ

 

山の中腹に 運営をやめた
果樹園があるらしい

 

そこに伝説の桃の木がある

 

こっちだな

 

やめよう

 

気をつけろ

 

ああ~ パパ
この岩 グラグラする!

 

つかまれ 早く!

 

せーのッ

 

ああ 怖かった

 

でも 本当にこの山にあるの?

 

ある …と思う

 

行くぞ

 

大丈夫か?

 

たしか この辺って…

 

ああ やっぱり

 

あの木
あッ!

 

なつかしいな

 

パパが作ってくれたんだよね

 

小梅が小学校卒業するまで

 

毎年 夏休みはこうして
一緒に山登りしたな

 

そうだね 木に樹液塗って

 

カブトムシとったよね
朝早く起きて

 

覚えてるのか?
まあね

 

夏休みが来るのが
楽しみだったよ

 

小梅と山登りなんて
もう一生ないと思ってたよ

 

いつの間にかパパは
小梅に嫌われちゃって

 

別に パパのこと
嫌いじゃなかった

 

そうなのか?

 

ただウザかっただけ

 

どこが?

 

存在

 

何だよ それ

 

まあ でも何となく分かる

 

パパもけっこう大変なんだね

 

私が生まれる前から
パパは会社に行ってたし

 

当たり前だと思ってたけど

 

働くって大変なんだね

 

そうだな…

 

私だったら とっくに辞めてるかも

 

家族がいるからな

 

すごいなあ 尊敬する

 

尊敬?

 

うん

 

尊敬かあ…

 

入れかわんなかったらさ

 

一生 パパをそんなふうに
思うことなかったね

 

パパも 小梅になってみて
いろんなことを思い出したよ

 

それから パパになったお前を見て

 

思い出したこともある

 

えッ どんな?

 

思ったことを言葉にする勇気

 

行動する勇気

 

けっこう難しいんだよな
大人になると

 

ふ~ん

 

じゃあ私も 大人になっても
忘れないようにしよっと

 

でも早く戻りたい
がんばって探そう

 

えッ どうしたの?

 

何でもない
ふ~ん

 

≪(中嶋)ヤーッホー!

 

そして ヤーッピー!

 

≪(中嶋)いや~ うれしいなあ→

 

西野さんが 僕が山岳部だってこと
覚えててくれたなんて→

 

しかし 山はナメちゃいかんですよ

 

山のことなら僕に任せてください

 

よいしょッ

 

頼りになります

 

フツー 大事な地図なくす!?

 

たぶんこっちだ 大丈夫か?

 

大丈夫

 

こっちかな?

 

ねえ ちょっと…
どこ行っちゃうんですか?

 

ほら ここです!

 

こんな所に果樹園あるんだ

 

これが本当に桃の木なのかしら?

 

そうです!

 

…と思います

 

全然ない…

 

本当に全部とっちゃったんだ

 

≪(中嶋)うまそうだな~ この桃

 

えッ!

 

おお~ いいニオイ

 

信じてるわけじゃないけど…

 

はらもへったことだし
二人で半分ずつ食べますか

 

ダメッ!
なになに!?

 

あッ ごめんなさい

 

おみやげに持って帰りたいんです

 

ああ… はい
ありがとうございます

 

私 お弁当作ってきたんです

 

愛情弁当!?

 

どこか休める場所 探しましょう

 

うん! ご休憩ですか…

 

あッ ここじゃない?

 

パパの記憶は正しかった

 

じゃあ どれが伝説の桃の木?

 

たしか変な形をしてて
虫がとまってるって

 

あッ!

 

クワガタがいる

 

これだ!

 

やっぱ ないよ

 

あきらめるなッ

 

あッ!

 

あった!

 

小梅に肩車される日が来るとは…

 

パパ 早くとって

 

動くな
パパ 重い…

 

えッ… てことは私?

 

戻ったら ダイエットしなきゃ

 

とったぞ

 

とった!?

 

パパッ
やっとだな

 

いくぞ

 

ええッ パパの食べかけ食べるの?

 

そんなこと言ってる場合か

 

まあいいか これで戻れるんなら

 

≪(ひそか)あの桃はね→

 

ただ食べただけじゃ
入れかわらないんだよ

 

そりゃそうでしょ
私達 何個も食べたけど

 

入れかわってないし

 

桃食べて 皆が皆
入れかわったら大変だわ

 

入れかわるには とっても
重大な秘密があるの

 

薬味もっと入れる?
私 切ってこようか

 

まあいいけどね 信じなくても

 

かわらないじゃん

 

かわらないな

 

なんで?

 

桃食べて入れかわったのに

 

桃食べても 元に戻れないなんて…

 

私の人生 このまま
おじいさんになって死ぬだけだ

 

そんなこと言うなよ

 

パパはいいよ 16歳なんだもん

 

私なんか いきなり48だよ!?

 

絶望だ~

 

48だよ…

 

あッ

 

おい こっちにはカブトムシがいるぞ

 

何それ?

 

じゃあ こっちの木ってこと?

 

だいたい 虫がとまってるっていう
だけじゃ 分からないよ

 

本当いいかげんな地図なんだから

 

≪(中嶋)あれ?

 

リーダーじゃないですか?

 

中嶋… お前会社は?

 

呼び捨て?

 

てパパが今 思ってます

 

すいません 夕方までには会社に
戻ろうと思ってたんですけど

 

急な展開になってしまって…

 

でもやっぱり 男としては
いいとこ見せないと…

 

俺もだ

 

じゃあ お互いさまじゃないですか

 

だけど どうして
こんな所にいるの?

 

実は… デートです

 

デート?

 

はい 昨日急に
彼女に誘われまして…

 

彼女?
誰でしょう?

 

正解 西野さんです ハハハ

 

西野さんも来てるのか?

 

内密にお願いしますよ
社内で噂になっちゃうとヤバイし

 

≪(和香子)中嶋さ~ん
は~い

 

どこ行っちゃったのか…

 

リーダーに会っちゃったよ
まいっちゃうね

 

なになに?
もしかして 桃とりに?

 

なかなかないね
さっき1個だけ拾ったんだけど

 

どこにある?
西野さんがリュックに

 

お土産に持って帰るって

 

ママに食べさせるつもりかも

 

桃の伝説 西野さんも聞いてたんだ

 

うん?